R 社が作成している,ある抗がん剤の患者向け服用ハンドブックの中に「服用により,生存期間や病気が進行するまでの期間を延長する効果が科学的に認められている唯一のお薬です」との説明があり,モニター医療機関の医療関係者はハンドブックを読んだ患者から,「この医薬品を使うまでの治療は何のために行っていたのか」との質問を受けた。
当該医薬品の服用に至るまで治療期間が長い患者もいるため,それまでの治療に対する不信感を生みかねない内容といえる。
確かに当該医薬品は特定の疾患に対する経口薬としては唯一の薬剤であるが,ハンドブックの記載では,当該医薬品ががん全般に対する唯一の治療法であり,他の治療は科学的に治療効果が認められないとの誤解を患者に与えかねないものであった。