Y 社の製品説明会において,MR が「自社製品の副作用発現症例数は全体の10%程度」という説明を行った。この説明会に参加していたモニター医療機関の医療関係者は,副作用が少ないという印象を受けたため,添付文書を確認したところ,臨床試験では約55%に副作用が認められているとの記載があった。
あらためてパンフレットとスライドを見ると,副作用の項目で紹介されていた第Ⅲ相試験では,添付文書で主な副作用として記載されている“***の血中濃度減少”を,盲検性の点で医師に開示しなかったため,有害事象の評価対象外としたとの注釈が書かれていた。
第Ⅲ相試験の副作用のみを紹介された場合には,あたかも副作用の発生頻度が低い印象を受けてしまうが,説明時にMR からの自発的な説明はなかった。
また,“***の血中濃度減少”に関連する事象についてはRMP の重要な潜在的リスクに記載があったものの,MR は,血中濃度の推移を示すグラフを用いて「投与を中止すれば,減少した***は回復するので使用できる」という表現で説明を行い,リスクについて触れることはなかった。
ポイント
副作用を過小評価するような情報のみ提供している。
慎重投与の対象患者について,安全性を軽視したPR
を行った事例
医薬品の種類
鎮痛剤
問題のあった情報提供活動・資材
MR による口頭説明
内容
Z 社MR は,当該医薬品について「**機能が低下している患者にも使いやすい」と説明を行った。しかし,**機能に障害のある患者は,添付文書では慎重投与の対象になっており,薬物動態の項目にも正常者よりも血中濃度が高かったと記載されていた。
**機能が低下している患者は用量や副作用についてモニタリングに注意が必要と考えられたので,MR に発言の真意を尋ねたところ,「従来薬と比較して使いやすい」という意図であったとの説明を受けた。比較対象を示すことなく,使いやすさのみをPR していたため,安全性について誤解を生じかねない事例であった。
ポイント
配慮が必要な患者について安全性を誇大に見せている。
使用上の注意を十分に認識せずにプロモーションを行った事例
医薬品の種類
骨粗鬆症治療薬
問題のあった情報提供活動・資材
MR によるプレゼンテーション(口頭説明)
内容
M 社の骨粗鬆症治療薬の添付文書では,使用上の注意として,必要に応じてカルシウム及びビタミンD を補給する旨や,血清カルシウム値の変動に注意する旨が記載されていた。しかし,モニター医療機関で医師向けに行われた勉強会で,説明を行ったM 社のMR は,血清カルシウム値の測定は必須ではないと認識しており,参加した医師はDI 室に対して投与後の測定等は必要ないかどうかの問合せをした。この他,他のモニター医療機関では,M 社のMR が当該医薬品について「急性期の副作用がなければ慢性期の副作用はない」といった趣旨の発言をしていたという報告もあった。
ポイント
副作用や安全性に関する理解・情報提供が十分でない。
禁忌があるにもかかわらず,投与前のスクリーニングを不要とPRした事例
医薬品の種類
乾癬治療剤
問題のあった情報提供活動・資材
製品情報概要
内容
N 社の当該医薬品は動物実験で胚胎児毒性があったことから,添付文書には禁忌として,妊婦又は妊娠している可能性のある女性の記載があった。また,腎機能障害においても用
量調節が必要とされているため,適正使用ガイドにおいては投与開始前の確認事項として8 項目のチェックリストが作成されていた。
このような投与前の確認事項がありながら,製品情報概要では製品特性の一つとして,投与前のスクリーニングや投与中の臨床検査及び血中濃度測定を必要としない旨の記載があった。投与前のスクリーニングが必要にもかかわらずこのような表記をすることは,重大な副作用や医療事故につながる恐れがある。